第53回兵庫県写真作家協会公募展(2020年度)
審査結果
第53回兵庫県写真作家協会公募展の審査会が9月27日、写真家・榎並悦子氏を審査委員長に迎え、神戸新聞社会議室で行われた。
出品者214名(出品点数670点)の中から下記の各賞が決定した。
入賞作品講評
各賞講評 : 審査委員長 榎並悦子
<総評>
今年は新型コロナウイルス感染症の影響で様々な行事やイベントが中止となりましたが、このコンテストの応募数は例年を上回り、まずは盛況を喜ばしく思います。
作品の大半は自粛以前のものだと思われますが、みなさん方々へ出かけ、精力的に撮影されていたものだなぁと改めて感心しました。
特に目についた祭りの写真は、コロナ時代に見返してみるとどれも貴重な記録資料でもあると感じました。
全体を通して、写真の記録性、魅力、そして楽しさを感じる作品群に圧倒されました。
そしてまた、このような時代だからこそ、身近な兵庫の魅力に目を向けて、さらなる傑作を残していただきたいと思います。
兵庫県知事賞
「約束の地」
関 保道(神戸市中央区)
まず独特の色調に引き寄せられました。
神戸市内のユダヤ教の集会所のようです。
組み写真としての展開もよく出来ていると思います。
特に1枚目の空に開放感が盛り込まれています。
神戸とユダヤ人のコミュニティーは関わりが深く、第二次世界大戦中に、杉原千畝が発給した「命のヴィザ(査証)」に救われたユダヤ難民の多くが身を寄せたのが神戸のユダヤ人社会だそうです。
色調等に加工を加えることで、写真を見る人それぞれが自分なりの解釈ができそうです。
映画「杉原千畝」を観ればさらにこの地を訪れたくなるでしょう。
兵庫県写真作家協会賞
「響宴」
赤松 昌哉(神戸市中央区)
現実の光景なのか、作者のイメージで作りあげた世界なのか、プリントでは判断できませんでしたが、大量の魚たちと、空を舞う無数の鳥たちを縦構図でうまく一枚にまとめ上げています。
ワイドレンズで圧倒的な魚の存在感を強調したことでインパクトの強い作品となりました。
兵庫県写真作家協会賞
「我関せず」
園部 治之(神戸市東灘区)
ねらっていた訳ではないと思いますが、雪の塊がお猿さんの顔に落ちてきました。
予期しないことが起こる面白さ!
そのシャッターチャンスを見事写真に切り取ったからこそ、何度も見ても楽しい作品になりましたね。
兵庫県写真作家協会賞
「夢の世界へ」
長原 恭子(猪名川町)
巨大なシャボン玉と幼児の組み合わせはまさに夢の世界ですね。
暗い背景を選んだことできれいな色味が確認出来ます。
映り込みをよく見てみると、シャボン玉の中にたくさんの人がいて、さらに空想が広がりました。
お父さんは全体を入れず手だけのほうが、この世界観がより伝わったと思います。
神戸新聞社賞
「左義長」
多田 正昭(姫路市)
旧正月に行われる左義長は、全国各地で行われていますが、写真は岐阜県の今尾でしょうか?
燃えさかる「どんど焼き」の炎と、飛び回る若者の姿を躍動感いっぱいにとらえています。
見ている側にも熱気が伝わるところがよかったです。
兵庫県教育委員会賞
「薄暮の頃」
大久保 晴子(神戸市北区)
暮れてゆく頃のなんともいえない寂しさや不安のようなものを、画面から人を排除することでうまく描き出しています。
それでいてピンク色の車や花といった気配を感じさせる小物をあしらうことで息づかいを感じさせます。
作者独特の世界観が魅力ですね。
兵庫県芸術文化協会賞
「共演」
大國 由紀子(明石市)
腹に描かれた絵に迫っているところが、ストレートでいいですね。
声をかけて撮られたのでしょう、ちょっと照れたような男たちの表情にも魅力を感じました。
コミュニケーションがよくとれた作品は、堂々としていて気持ちがいいですね。
サンテレビ賞
「怪鳥飛来」
和泉 正則(三田市)
まずカメラアングルに度肝を抜かれました。
カメラに向かってくるようで一瞬恐怖を感じます。
しかしよく見ると脚の形がユーモラスな瞬間をとらえていて、笑いが込み上げてきます。
とっさのピント合わせとシャッター速度の設定が見事でした。
写真だからこそ、目に焼き付くシーンとして残りました。
富士フイルム賞
「蓮のメロディー」
川瀬 茂代(神戸市灘区)
フイルムで撮影された作品です。
水滴を上手く生かして、しっとりとした蓮の情景を3枚組にまとめています。
最後の写真は水滴の中にも蓮を映り込ませていて素敵ですが、右端に色を添えたところにも作者のセンスを感じました。
写真材料商協同組合賞
「妙見祭」
妹岡 実(赤穂市)
疾走する馬と水しぶき。
ダイナミックな作品は、八代の妙見祭、砥崎河原での演舞のようですが、広い河原でこれだけ迫力のある写真をものにするには事前の下調べとカメラポジションによるところが大きいと思います。
総合的な写真力が結実した傑作ですね。
写真材料商協同組合賞
「上座部仏教徒」
谷 登志朗(姫路市)
“祈り”を手に焦点を当てて作画した一連の作品は、表情をあえて写さないことで個々の祈りの様子をとてもシンプルに伝えています。
線香や数珠も重要なアイテムですが、手を合わせた写真がいちばん心に響きました。
左側に空間をつくった余韻が効いています。
ラボネットワーク賞
「散策」
亀井 信彦(神戸市兵庫区)
少し高い位置から撮影することで、影の面白さを存分にとらえています。
規則正しく並んだ柵の直線的な影と、車輪の円い影が好対照です。
モノクロ表現で陰影を際立たせたのがよかったと思います。
奨励賞
「地域密着壁画」
荒木 郁子(神戸市北区)
「壁画」は誰もがレンズを向けたくなる被写体ですが、それだけでは作品になりづらく難しい被写体でもあります。
作者は人物を添景として効果的に捉えています。
絵本の中で、遊んでいるような子供たちの姿が微笑ましいですね。
「漁港」
井田 真沙子(神戸市西区)
風に揺らぐ洗濯物の下で無邪気に遊ぶ柴犬。
のんびりとした漁港の日常を上手く切り取った生活感のある一コマです。
犬と目高位置を同じにすることによりインパクトのある作品になりました。
「ふる里の杜」
岡島 一郎(姫路市)
怖いくらい幻想的な光景です。
幽幻の世界に誘われているかのようです。
闇の奥にはまた違った空間が広がっているのでしょうか?
見る者の想像がどんどん膨らんでいきます。
「夕照」
沖見 博子(神戸市東灘区)
瀬戸内の島でしょうか?
何気ない被写体の中に、ゆったりと流れる時間と、光の暖かさを見事に表現しています。
物怖じしない猫の様子からも、居心地のよさがうかがえます。
「晩秋の水面」
柏木 正(神戸市西区)
移りゆく季節を的確に捉えています。
美しい水の流れの中に、命のはかなささえ感じられます。
何気ない光景を見事に作品にされたと思います。
「なかよし」
小寺 一郎(尼崎市)
木造の校舎と鉄棒、タイムスリップしたような古き良き時代を思い起こさせてくれます。
シャッターチャンスもよく、少女の赤いギンガムチェックのスカートが良いアクセントになっています。
「夏日」
薦田 佳郎(神戸市北区)
夏空一面がカラフルなビニール傘に彩られた鮮やかな光景です。
明石海峡公園での一コマでしょう。
添景に配した人物の麦わら帽子が、夏の日差しをより強く感じさせてくれました。
「テールアート」
千田 正憲(神戸市東灘区)
動物写真の表現方法も様々ですが、象の体の一部を切り取り、光と影を巧みに採り込んでデザイン的に構成、作者のしっかりとした狙いが感じられます。
皮膚の描写も良く、右側のわずかな空間に画面構成のセンスのよさを感じました。
「早春」
中松 京子(神戸市北区)
春爛漫ですね。光を上手く捉え黒バックに浮かび上がった見事な枝垂れ桜。
重なり合う細い幹にも動感があり、画面全体を引き締めています。
手前にレンギョを添えたのも効果的、透明感のある美しい光景です。
「子猿」
薬師 鉄也(淡路市)
初めて見る物に対しての好奇心と、不安の入り混じった表情がよく表現されています。
作者の優しさが伝わってくるようです。
無駄のないフレーミングがよりインパクトを強くしました。
入選
熱い踊り | 浅井 美也子(加古川市) |
昭和の香り | 浅尾 建次(姫路市) |
街角A | 荒岡 浩志(神戸市長田区) |
虹色に光る | 石田 泰彦(小野市) |
奉点燈祭 | 泉田 英幸(姫路市) |
ある光景 | 井上 淳一(南あわじ市) |
森の妖精たち | 上田 禎亮(尼崎市) |
ボン・ボヤージュ | 上村 隆夫(神戸市中央区) |
ワンチーム | 太田 英雄(西宮市) |
昭和への憧憬 | 岡田 茂(神戸市北区) |
百合 | 奥井 利明(明石市) |
静寂 | 小林 貴美子(小野市) |
光と影 | 小林 健二(神戸市西区) |
五月の風の下で | 柴田 恵子(神戸市中央区) |
テントウムシの季節 | 鈴木 博(神戸市須磨区) |
I can fly | 辻本 幸代(神戸市垂水区) |
得意顔 | 堂上 芳(明石市) |
友だち | 西谷 朗(神戸市東灘区) |
吹屋ベンガラ灯り | 野勢 数馬(赤穂市) |
左義長 | 野村 正志(姫路市) |
内緒の話 | 藤原 俊郎(神河町) |
E・T | 古家 直紀(神戸市北区) |
この世の地獄 | 別所 孝司(姫路市) |
閉店 | 松岡 恭子(神戸市西区) |
夏日 | 真殿 和子(神戸市東灘区) |
こどもの日 | 道上 敏夫(南あわじ市) |
目覚めたけど夢の中 | 森 政勝(神戸市垂水区) |
眩光の格子 | 森口 正基(たつの市) |
過日 | 森田 眞里子(神戸市長田区) |
水滴 | 山口 祐三(明石市) |