第57回兵庫県写真作家協会公募展(2024年度)
審査結果
第57回兵庫県写真作家協会公募展の審査会が、 2024年 9 月 15 日、楽園写真家 三好和義氏を審査委員長に迎え行われました。
出品者144名、 出品点数 439点 の中から各賞が決定しました。
総評:審査委員長 三好和義
今回初めて公募作品を拝見しました。
応募されたみなさんが、さまざまな場所で工夫を凝らして撮影されたようすが伝わってきます。
美しい作品が多いのも印象的でした。それぞれの作品の格調の高さにも、この公募のレベルの高さを実感しました。完成度の高さ、皆さんの創作意欲に、大いに刺激を受けました。
今後もそのパッションを持ち続けていただきたいと思います。
このたびは楽しい体験をいたしました。ありがとうござました。
兵庫県知事賞
「街角寸景」
秀平恵子(神戸市垂水区)
秀平さんのセンスが光っています。近未来の街空間が美しく構成されています。韓国、ソウルのザハ・ハディトの建築とピョルマダン図書館を撮ったものですが、日本にはない不思議な空間です。形だけでなく、色の組み合わせも上手です。人の気配がさりげなく配されているところが、現実感を出しています。曲線、フレーミング、タイトルのセンスが良いです。
兵庫県写真作家協会賞(3点)
「暮色の海」
岡村 佳代子(川西市)
山口県・油谷地区東後畑の棚田。ぼんやりと霞んだ情緒のある作品です。紫色に染まる夕暮れの光が良いですね。イカ釣りの漁火がいい具合に並んだシャッターチャンスも良かったです。静かな海面に映り込んだ光の道など、素晴らしい条件が揃って撮影されています。
「窓」
森田 眞里子(神戸市長田区)
柔らかな光と影を上手に扱った作品です。小説を読んでいるような奥行きのあるストーリーを感じさせる作品です。神戸の異人館で撮られたものですが、シンプルな構成に好感を持ちました。
「沈黙」
川﨑 克洋(伊丹市)
石仏がずらりちと並んだ異様な風景ですが、空を暗く焼き込んだことによって、より重厚な世界を作り上げています。モノクロにしたことで、石仏のザラザラとした質感が強調されたところに上手さを感じました。三重県・大日堂の五百羅漢。神様と仏像が仲良く並んでいる珍しいところです。
神戸新聞社賞
「鶏」
柴田 恵子(神戸市中央区)
暗い背景に堂々とした鳥の姿を捉えています。目はもちろん、黒い羽根のツヤツヤとした質感までシャープに捉えていて迫力のある作品になっています。足を上げて動きのあるポーズ、アップの組み合わせも的確です。格調のある作本で、若冲の世界を思い浮かべました。
兵庫県教育委員会賞
「空模様」
川添 卓也(洲本市)
さまざまな自薦現象を組み合わせ。不思議な世界観を作り上げています。今までに見たことのない斬新な組み合わせです。カミナリの写真の迫力には圧倒されました。
兵庫県芸術文化協会賞
「クライマックス」
岸田 緑(加古川市)
動きのある作品です。毛獅子の舞を撮ったものですが、ストロボの光で浮かび上がった迫力の姿に圧倒されます。自然光でなく、ストロボの光だからこそ、このツヤツヤした質感が引き出せたのです。うっすらと暗闇から浮かび上がるお堂も傾いていて、動きが感じられます。
サンテレビ賞
「寒行」
多木 一夫(加古川市)
寒行のようすを、粉雪など完璧な条件で撮影しています。濡れた道、うっすらと雪化粧した風景の中をゆく組み合わせにもリズム感があって良いですね。情緒的な表現が素晴らしい秀作です。
富士フイルム賞
「壮大な伝承の空間」
田嶋 紀雄(神戸市東灘区)
中国の奥地雲南省ハニ族が作り上げた虹色に見えるスケールのある、世界最大とも言われる棚田です。ここは世界遺産にもなっています。まるで空から空撮したかのようなアングルで迫力があります。田嶋さんの手応えを感じます。水面に光が映り込む幻想的です。人の暮らしが生んだ絶景。四季それぞれの風景も見たくなります。
兵庫県写真材料商協同組合
「立泳ぎ」
古家 直紀(神戸市北区)
ゴマフアザラシが天を見つめています。気持ち良さそうです。ブルーが深く、透明感があり、美しくプリントされています。濡れた頭の質感がシャープに写されていて。飛び出して来そうです。水の屈折で曲がって見える足ひれが面白く、アクセントになっています。
奨励賞(15点)
「にわか雨」
道上 敏夫(南あわじ市)
突然の雨の中、獲物を狙っているのでしょうか? 無駄のないフレーミングで、カメラ位置、シャッターチャンスが秀逸、迫力のある作品です。翼についた雨滴も印象的です。
「黒猫のいる景」
藤本 昇三(小野市)
軒先に吊るされた玉ねぎの番をするように、害獣除けの黒猫が座っています。唐突感がありユーモアのある作品です。
「夜明け」
上村 隆夫(神戸市中央区)
朝靄のかかった田んぼの中に、うっすらと明かりの灯った屋台が印象的です。空気感のある情景、自転車の人物の配置も適切で、俯瞰撮影が成功しました。静かな一日の始まりです。
「街角P」
荒岡 浩志(神戸市長田区)
パラソルをさす人物をポイントに構成。色を省略しシンプルにまとめられています。特に右の作品の大胆な構図や、赤の配置が目を惹きました。照りつける夏の暑さが伝わってきます。
「晩夏」
岩村 令子(神戸市須磨区)
夏の間咲き誇り、私たちの目を楽しませてくれた向日葵もその役目を終え、無惨にも刈り取られ山積みにされています。モノトーンでの表現も適切、季節の移ろいと命の儚さを感じる一枚です。
「Morning」
なかにし 宏明(伊丹市)
廃屋の植物、父と子、ビルの谷間の猫、それぞれの朝を断片的に表現しています。どこでも誰にでも、一日の始まり朝は巡ってくることを映し出しているのでしょう。作者の優しさが感じられる作品です。
「雪鴉」
中井 正和(神戸市長田区)
柿の木が雪に耐え、その存在を示しているかのように2本並んでいます。黒い木肌に貼り付けられた雪の白い輪郭と残り柿の赤い色が印象的です。2羽のカラスがアクセントとなり、画面を引き締めています。
「想い」
藤賀 洋子(西脇市)
廃屋化した商店街、アーケードも朽ち果てています。時間が止まったような情景です。まるでスポットライトを浴びたかのような女性の姿が心なしか寂しげに見えます。いずれ取り壊される商店街に想いを馳せているのでしょうか?
「朝霧」
田中 信政(福崎町)
霧の中に浮かぶ静かな光景がとても神秘的です。針葉樹のシルエットも美しく、遥かかなたに集落が見え隠れし、より奥行きのあるスケールの大きな作品になりました。
「茜色に染まる」
嶋村 保男(神戸市北区)
水を張った田んぼに映る電車の影、とてものどかなノスタルジックな光景です。空間の広がりにより静寂感が増し、電車の音だけが聞こえてくるようです。上下シンメトリーにされた構成も安定感があり効果的です。
「初めての散歩」
岡本 直樹(姫路市)
生まれたばかりのカマキリ、初めての世界に興味津々。この先の厳しい現実の中、無事に大きくなることを願いながらレンズを向けられのでしょう。作者の優しさが伝わってきます。
「夜の藤」
百々 順一(神戸市西区)
山口市の一貫野にある自生している藤の大木です。人工的な支柱などなく自然のままで、流れ落ちるように見事な花が咲き誇っています。清流との対比も美しく、暗闇に浮かぶ姿は妖艶です。
「秋彩に流れる」
今田 裕(尼崎市)
深秋の渓流をスローシャッターで撮影、水の流れる音が聞こえてくるような臨場感のある光景です。画面上部の滝の流れもアクセントになっています。
「水と光の共演」
奥井 利明(明石市)
光の捉え方がうまく、清涼感のある美しい作品です。大胆なフレーミングが目を惹きました。木の配置や量、空間の取り方など作者の美意識を強く感じました。
「冬荒れ」
大西 惠美子(寝屋川市)
寒々とした漁港、黒いマントの人物の配置もよく動感があり効果的です。この人物の登場によりドラマのワンシーンのようになりました。観る者の想像を掻き立てる作品です。
入選(30点)
岡 廣和 | 河村 成美 | 田中 宏 | 小倉 邦美 | 杉崎 隆一 |
常峰 隆夫 | 石田 麻莉 | 村上 光臣 | 向井 寿 | 川崎 陽子 |
仙﨑 幸子 | 山本 耕三 | 蒲田 美智 | 山田 和子 | 小林貴美子 |
山野 英俊 | 野見山かづ代 | 堂上 芳 | 長谷川祐作 | 岡崎有里子 |
野村 正志 | 中巻 廣介 | 長谷川美恵子 | 森垣 雅則 | 階戸三枝子 |
藤原 俊郎 | 紙田タカシ | 白川 博也 | 金 勝彦 | 今西 收 |